ズミ
Malus toringo
北海道から九州まで、山地や高原などの林縁、湿原といった湿り気のある明るい場所に自生しています。高いものだと樹高は10mほどになりますが、一般的に横へと枝を伸ばします。樹皮は灰褐色で、縦にヒビが入り短冊状に剥がれます。また小枝は刺状となる傾向にあります。楕円形の葉は葉身が3〜10cmほどで先が尖り、縁には重鋸歯または細かい鋸歯があります。3〜5に中裂した分裂葉が一部にあり、特に長枝で多く見られます。葉柄は1〜3cmと長く、白い軟毛が密生していて披針形の托葉が付きます。5〜6月に大きさが2〜4cmの白い花を咲かせます。花弁は5枚で中央に花柱が3本、まれに4〜5本あり、その周りに雄しべが多数あります。直径8mm前後ある球形の果実が9〜10月に赤く熟します。年によって豊凶の差が激しく、ほとんど花が咲かない年もあります。ズミによく似た樹種にエゾノコリンゴ(Malus baccata var. mandshurica)がありますが、よく見れば判別は可能です。まず出始めの若葉がズミは二つ折りなのに対してエゾノコリンゴは巻いていること。ズミは一部の葉が中裂しますがエゾノコリンゴは不分裂葉。蕾がズミは濃紅色でエゾノコリンゴは淡紅色や白色などが違いです。当種の名の由来は、酸味のある果実「酢実(すみ)」から、また樹皮から黄色の染料を作った「染(そ)み」からとも言われています。[1][2]
りんごの台木としてズミが利用されていた時期がありました。形質の良い個体の種子から実生で育てても同じ形質の個体が得られるとは限らないため、良質な個体をクローンで増やすのが確実です。簡単な方法は、増やしたい個体の枝を別個体の根側に接ぎ木することです。この根側の台となる木が台木(だいぎ)です。果樹の接ぎ木は紀元前から行われていた技術です。明治初期にりんご栽培が始まると、同じリンゴ属の樹であるズミ(ミツバカイドウ)、エゾノコリンゴ、実生、中国北部原産のマルバカイドウなどが昭和30年代まで台木として使われていました。昭和40年代に入るとそのほとんどが耐病性の高いマルバカイドウになったそうです。さらに近年では、成果期までの期間が短く、樹高が低くて省力化できる、既存のリンゴの実生から系統選抜された「わい性台木」が主流です。[3][4]
りんごの台木
ズミは湿原で生育している例が多く、日光の戦場ヶ原や尾瀬では6月初旬に満開の花を咲かせることで有名です。そんな戦場ヶ原では1991年と1993年にズミを伐採しています。理由はズミが個体数を増やし生長しすぎて景観を損ねてしまったためです。元々は土砂流入などの撹乱によって大きくなれなかったのが、保全されたため生長しやすくなったと考えられています。りんごの台木としてズミが利用されていた時期がありました。形質の良い個体の種子から実生で育てても同じ形質の個体が得られるとは限らないため、良質な個体をクローンで増やすのが確実です。簡単な方法は、増やしたい個体の枝を別個体の根側に接ぎ木することです。この根側の台となる木が台木(だいぎ)です。果樹の接ぎ木は紀元前から行われていた技術です。明治初期にりんご栽培が始まると、同じリンゴ属の樹であるズミ(ミツバカイドウ)、エゾノコリンゴ、実生、中国北部原産のマルバカイドウなどが昭和30年代まで台木として使われていました。昭和40年代に入るとそのほとんどが耐病性の高いマルバカイドウになったそうです。さらに近年では、成果期までの期間が短く、樹高が低くて省力化できる、既存のリンゴの実生から系統選抜された「わい性台木」が主流です。[3][4]
Gallery
Malus toringo
樹形
北邦野草園
Taken on June 2, 2012
高いものだと樹高は10mほどになりますが、一般的に横へと枝を伸ばします。
樹形
北大苫小牧研究林
Taken on June 2, 2019
樹形
北大苫小牧研究林
Taken on June 3, 2018
葉
北大植物園
Taken on June 16, 2012
3〜5に中裂した分裂葉が一部にあり、特に長枝で多く見られます。
冬芽
北大苫小牧研究林
Taken on Apr. 7, 2019
展開時の葉
旭川市
Taken on May 31, 2012
葉
葉の裏
葉柄
葉
尾瀬
Taken on Oct. 1, 2022
花
旭川市
Taken on May 31, 2012
5〜6月に大きさが2〜4cmの白い花を咲かせます。
蕾
旭川市
Taken on May 22, 2012
花
旭川市
Taken on May 31, 2012
果実
尾瀬ヶ原
Taken on Oct. 1, 2022
直径8mm前後ある球形の果実が9〜10月に赤く熟します。
樹皮
北大植物園
Taken on June 16, 2012
樹皮は灰褐色で、縦にヒビが入り短冊状に剥がれます。
Property
Malus toringo
分 類 | |
和名: | ズミ(酸実) |
別名: | コリンゴ、コナシ、ミツバカイドウ |
学名: | Malus toringo (Syn. Malus toringo var. sargentii) (Syn. Malus baccata subsp. toringo) (Syn. Malus sieboldii) |
目: | バラ目(Rosales) |
科: | バラ科(Rosaceae) |
属: | リンゴ属(Malus) |
分布: | 日本、朝鮮半島、中国中南部 |
国内分布: | 北海道、本州、四国、九州 |
用途: |
特 徴 | |
針葉/広葉: | 広葉樹 |
常緑/落葉: | 落葉樹 |
樹高: | 小高木/高木 |
葉形: | 単葉(不分裂/分裂) |
葉序: | 互生 |
葉縁: | 鋸歯 |
雌雄: | 雌雄同株(両性花) |