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ミヤマナラ
Quercus crispula var. horikawae

 ミズナラ(Quercus crispula)の変種で高山適応型です。日本固有種で本州日本海側の亜高山帯にある多雪地帯に自生しています。幹は横に走って分岐し、樹高は高くても3mほどにとどまります。樹皮は灰褐色で大きな皮目が目立ちます。葉身長はミズナラの半分ほどで大きくても12cmほど。形状はミズナラそのものですので、葉柄は短く葉縁には荒い鋸歯があります。葉の裏にはミズナラと違って毛が密生しやすいです。葉が展開した後の6月ごろに花を咲かせます。長さが4〜8cmの雄花序は新枝の下部から数本垂れ下がり、雌花は枝先端の葉腋にこれも複数個咲かせます。どんぐりは秋に熟しますが長さは1.5〜2cmでミズナラの半分強です。[1][2][3]

偽高山帯

 偽高山帯(ぎこうざんたい)とは、日本海側の多雪地帯において、通常はオオシラビソなどからなる針葉樹林が広がるべき亜高山帯なのですが、多雪と強風の影響で針葉樹が育たず、低木の落葉樹やササが自生している見かけ上の高山帯のことです。そのため、標高1,000〜1,500mといった東北地方では高山帯よりも低い標高でありながら高山植物が多く見られる地帯になっています。鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊山といった山々で見ることができます。ミヤマナラはこの偽高山帯の代表的な樹種です。

遺伝的差異

 ミズナラの矮小化したものがミヤマナラです。秋田県の森吉山では偽高山帯と亜高山帯の植生が混じり合って存在しています。そのためミヤマナラとミズナラの自生地が近いという特徴をもつ地域です。遺伝子解析によるとここでの両種のcpDNAハプロタイプは異なっていました。一方で、4つの地域で外見からミヤマナラとしていた個体が遺伝子解析により実はミズナラだと分かったとのこと。これは環境要因が個体を矮小化させていることを示唆しています。遺伝子解析によりミヤマナラとされた個体はほぼミズナラから順に分化していたそうです。つまりミズナラから分岐した単一系統に属するミヤマナラが異なる山域に定着していったということになります。那須連山の北西部に位置する裏那須の大峠は戊辰戦争で会津軍と新政府軍が戦った激戦地です。この地は偽高山帯でミナマナラが自生しています。10×12mの範囲にある92個体を遺伝子解析した結果、4つのジェネット(遺伝的に同一な個体群)に分けられ、そのうち1つのジェネットには87のラメット(栄養繁殖によって増えた根や茎を持つ独立した個体)から成っていたとのこと。伏条による栄養繁殖が優位にあることがわかりました。[4][5]

参考文献
  1. 林将之(2014)『樹木の葉』山と溪谷社
  2. 茂木透ら(2006)『樹に咲く花―離弁花(1)(第4版)』山と溪谷社
  3. 加藤雅啓ら(2011)『日本の固有植物』東海大学出版会
  4. Lerma San Jose-Maldia et al.(2024)"Intraspecific genetic divergence of the subalpine shrubby variety Quercus crispula var. horikawae from the mountain tree variety Q. crispula var. crispula in Japan", Plant Species Biology, Plant Species, 39(3), pp.113-125
  5. 遠川千聡ら(2015)『那須山系におけるミヤマナラの更新様式』「植物地理・分類研究」63(1), pp.1-8

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樹形

栗駒山(June 22, 2024)

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樹形

宮城県雁戸山(June 28, 2025)

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樹皮

栗駒山(June 22, 2024)

Property
分 類
和名 ミヤマナラ(深山楢)
学名 Quercus crispula var. horikawae
(Syn. Quercus mongolica var. undulatifolia)
ブナ目(Fagales)
ブナ科(Fagaceae)
コナラ属(Quercus)
分布 日本
国内 本州
用途
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 低木
葉形 単葉(不分裂)
葉序 互生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄同株(単性花)
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